人間力を磨くことが大切

コンピューターの進化・発展は現代では目覚ましく、とどまるところがないと言ってもいいでしょう。AIに、「読書感想文を書いて」「○○するプログラムを作って」「この文章を300字に(要約)して」などの課題を出すと、あっという間に模範解答が出来上がるそうです。こうした生成AIに対しては、戸惑いさえ感じられますが、私たちはどう向き合っていけばいいのでしょうか?

これまでも参考にさせていただいた上水流(かみずる)信秀(のぶひで)先生は、適確で意義深いアドバイスをくださっています。

「今のAIにできないことは、まだまだたくさんあります。例えば、私たちは同じ質問でも、相手によって答えを変えることがあります。その答えが相手にとってどういう意味を持つのか、どんな気持ちになるのかなど、AIはまだ完全に対応することができず、一般的な答えを返すことが多いのが現実です。

私たちは、相手との関係を考え、その時の表情などから相手の“心”を読み取り、答えを導き出します。その力こそが「人間力」であると考えます。AIの時代こそ、人間力を高める必要があるのです。」(岐阜新聞2023年5月14日記事「考えよう!みんなのケータイ・スマホ」)

「今の皆さんに最も重要なのは、AIやプログラムの理解より、人に対して優しく誠実に向き合える力や、相手の心を理解して丁寧に人と接する力、つまり「人間力」を磨くことが大切だと考えます。それは、今みなさんがいる仲間の中で育まれるのです。」(同紙2024年4月14日・同連載記事)

私たちはさまざまな仲間と一緒に仕事をしたり、食事・遊戯・レジャーを楽しんだり、といったつき合いの中で、ある時にはコミュニケーションに失敗し仲違(なかたが)いも経験する中で、相手・仲間をより深く知ったり、信頼関係を深めたりしますが、そうした人間力トレーニングが、私たち大人も子どもたちも今は大切なのですね。

現今、次から次へと新手のネット詐欺が出てきますが、こうしたことから自分を守るためにも、さまざまな情報発信を正しく受け取る力を「人間力」アップにより磨いていきたいですね。

SNS情報の危うさ・デマ情報に気をつけて!

現在では、ほとんどのSNSが自由に登録・閲覧・投稿できるようになっており、大きくは国際政治・国内政治・経済・社会事件など、さまざまな場面・ジャンルでおおいに使用され、良いも悪いもこれまでになかった大きな影響を与えるようになりました。

一つの例では、2016年の熊本地震の時に、「ライオンが逃げた」というデマ情報がSNSを通して発信されました。この「うそのつぶやき」は、あっという間に2万回ほど再発信され、拡散し、閲覧した多くの人がこの情報におびえることになりました。

こういったことに陥らないために大切なことは、テレビ・ラジオ・新聞・インターネット・政府広報・自治体広報などのさまざまな情報を「見くらべて考える」ことです。

(上水流(かみずる)信秀(のぶひで)氏筆・岐阜新聞記事・2017年2月14日・2018年10月23日・2019年3月10日・2021年2月9日)

一つの新奇な情報をすぐに鵜吞みにせず、「ちょっと待てよ」と少し距離をとって、いくつものメディアを読みその中から本当・真実を見出していく作業は、しんどく、面倒な作業ですが、その営みを信頼できる仲間の助けも得て、地道に務める粘り強さと注意力が不可欠なのですね。

ラインのリスク

~SNSの「知り合い」と本当の「友人」の区別ができなくなる・SNSの中の人間関係が実際の人間関係を超えてしまう~

 

LINEは、今ある人間関係からスタートし、広がっていきます。暮らしに近いSNSであるからこそ、「気にしないわけにはいかない」という思いが心の奥に広がってくるものです。心配で「深夜までスマホを見つめている自分」に変わってしまう可能性もあります。

人間関係を学んでいる途上の青少年にとって、心配なことは、SNSの中の人間関係が、実際の人間関係を越えてしまうことです。SNSで「友だちの紹介で知り合った」だけの人と、教室の中で悩みを相談できる「友人」とが、区別できなくなる事例が多くみられるようになってきました。以前に起きた少女の殺人事件では、被害者と実際に「知り合いだった」のは、たった一人でした。SNSの「知り合い」と本当の「友人」の区別ができなくなっている一つの例かもしれません。

SNSの中で、悩んでしまったとき、どうすればよいのでしょう? これは、とても難しい問題です。この悩みを乗り越えた高校生は、こう語ってくれました。「悩んだらね、一度、全部、やめてみて! 勇気をもって! きっと、それ(SNS)がなくても、一緒になれる子がいることに、あなた、気づくから!」

SNSで変わる前の「自分に戻ること」それが大切なのかもしれません。

(上水流信秀氏筆・岐阜新聞2015年5月12日「考えよう!みんなのケータイ・スマホ」記事を要約しました)

「いやだ!」「やめて!」と言えない純粋無垢な幼少期の子どもは、ライン上だけで知り合った人物に対し、自分で勝手に想像してつくりあげた人物像に飲み込まれてしまう、ということが起こりがちなんですね。

ネット問題・その1

<自分や家族の写真・動画・個人情報をネット上にアップしたものがねらわれ、いじめに利用されたりする。>

私個人としては、自分や家族の写真データなどをネット上にアップしたいとはつゆ思いませんが、一般的にはそういうことをやってみたいと思う人々は多くいるのでしょう。自分の中に何か面白いこと・役立つこと・主張したいことなどを持っている人が、一人でも多くの人々に知ってもらいたいと要望する気持ちは分かりますが、やはり社会に情報発信したからには、善かれ悪しかれその記事・内容、そしてその理解のされ方に責任を持たなければならない、というのが情報発信のルール・マナーでしょう。ただ単に浅薄な好奇心や思いつき・鬱憤(うっぷん)晴らしだけで発信したりせず、冷静に何度も「この情報は発信してもいいか?」「誰かを傷つけることはないか?」「市井(しせい)の店舗などに迷惑をかけることはないか?」と十分吟味し、さらに慎重に、信頼できる自分の知人・友人にも一度見てもらった後、自分の責任の上で決断する、という一人前の市民の自覚・姿勢・心得をまずはしっかりと養うことが必要でしょう。

単なる好奇心や悪ふざけでネット上に映像をアップして、社会的に多大の迷惑をかけ訴訟ごとになり、マスコミで報道され糾弾される事件がしばしばあります。そうした事件を知るたびに私たちは、その事件の何が根本的に問題だったのか?自分なりに真剣に考え今後のネット活用に生かしていく必要がありますね。

また、個人情報をいったんネット上にアップすると、瞬時に世界中に出回ってしまい永久に消せないということの自覚、他人に知られて悪用されるかもしれない情報・弱みにつけ込まれるかもしれない後ろめたい情報は、はなから発信しない!と固く決意すること、自分の身に覚えのない請求や脅しなどには常識・良識に照らし合わせて決して応答しない・屈しないとの強い決意も必要ですね。

<ネット上のトラブル>

年々増加しまた進化するネット上のトラブル・詐欺事件には、なかなかついて行けないというのが、一般市民の実感ではないでしょうか? これは、さまざま起こるネット事件の根っこは、裏組織がはたらいているからです。個人的な犯罪ではなく、大きな闇組織が動いているため、ブレイン軍団の考え出す悪知恵の質もどんどん高度・多様化し次々に新手の手口が出てきます。取り締まる警察と賊とのいたちごっこも、終わる兆し・望みはありません。

子どもたちや善良な市民を守るため、専門的に啓発活動をする部局もありいろいろな啓発パンフレットも出ていますし、小中学校でも保護者向けに関連の講演会・研修会がしばしば開催されています。

現在子どもたちの日常生活の中でのネット問題を整理してみますと、基本的な問題は、以下の4つほどになるようです。

①自分や家族の写真・動画をネット上にアップしたものがねらわれ、いじめに利用されたりする。

②ライン・メール上のことばのやりとりに、十分な配慮に欠けていることから、真意・本意が伝わらず、誤解・反感が広がってしまう。

③ライン上で知り合った人と実際に会ったが、写真の人と違っていて、被害に遭う。

④「闇バイト」や偽(にせ)ホームページを通じ申し込みをしてしまい、悪の道に入り込んでしまったり、入金したのに注文した品物が来ない。

次回より、それぞれについて、はまり込まないような心得・対策などを考えてみましょう。

悩みごとを相談するネットの向こう側には、こんな人かも!?と疑ってみることも大事(上水流信秀(かみずるのぶひで)筆・「考えよう!みんなのケータイ・スマホ」岐阜新聞2017年12月12日)