<幼児・小学生の学ぶ力を育むために心がけたいこと・大切なこと・実践すべきこと>

幼児期を終えたら、いよいよ就学し小学校での学習が始まります。読み書き・聞き取り・漢字ドリル・計算ドリル・図形など、得意・不得意・好き・嫌いにかかわらず、誰しも取り組まなければならない課題が続いていきます。発達・成長は、本来細かく上がったり下がったり(成功したり失敗したり)というジグザグの発達を繰り返しながら、全体的にゆっくりと個々のペースで進んでいくものです。こうしたジグザグの発達を経ながらも、着実に知力・学力・地頭(じあたま)をつけていくために、ぜひとも家庭で心得るべきこと・実践すべきことなどを考えてみたいと思います。

私も10数年前に、初めての子をさずかり、その子が年長から小学校入学を控えたころ、「はて、親としてどんな見守り・支援(サポート)をしていけば良いのかな?」と考え、当時新聞広告などで紹介されていた教育心理学者や塾講師等が執筆されていた啓発書を何冊か買って読んでみました。読み進むうち、それらの諸々の書がどれもほぼ7~8割同じ内容だと言っていいことに気がついてきました。それらの内容を、私なりに整理しつつ、本欄で何回かにわたって、縷々(るる)述べていきたいと思います。(どんな本を読んだかは、このテーマでの一連の諸文章の最後に掲載・紹介します。)

以下の内容の中には、これまで、乳幼児の心身の健やかな成長・発達のために留意すべき大切なこととして、述べてきたことと重複する部分も少なくありませんが、そのように気がつかれた方は、改めて復習として読んでいただければ、と思います。

【基本的・根本的な心得】

愛情ある平和な家族が、子どもを見守る・認める・サポートする・楽しむ・褒める。 温かく豊かな会話・コミュニケーション・スキンシップ(抱っこ・ハグ・頭をなでる)などにより、 愛されているという実感・信頼感が子にあること。このことが自己肯定感を育みます。叱る・怒るはできるだけ少なく心がける。(完全にゼロにはできませんが。) 親のことばは大切です。強制・過干渉・押しつけ・過保護はダメです! 過保護とは、子ができることまで親・保育者がやってしまうことです。 虐待・暴力・ 折檻(せっかん)は問題外。

お手伝いもその子にあったレベルのものを大いにやらせ、褒める。「よくやってくれたね!ありがとう!助かったよ。」など。(私自身、小学校高学年から中学生のころ、父親に境内等の葉っぱ掃除・草取りなどの手伝いをよく頼まれ、自分なりに一生懸命に取り組んだら、「一人前やれるようになったな。」と嬉しそうに言われ、私も嬉しく誇らしげにも感じたことを覚えています。)

コンフォートゾーン(自分らしいゾーン)・安心できる居場所を確保する。(コンフォートcomfort:快適さ・安心)

《子どもは③⑦⑩歳(を節目)に進化する》

0~3歳;かわいがることが、心をたくましくします。
脳の神経細胞が増え続ける時期ですが、神経伝達回路はまだ未熟で、大好きなお母さんお父さんからたくさん愛情を受けることが脳の発達に良い影響を与えます。
3~7歳;子どもの気持ちの整理を手伝いましょう。
増え続けた脳の神経細胞のうち、不用な細胞が消去される「間引き現象」が起きます。脳の神経細胞のベースを作って、脳の基礎を作ります。
7~10歳;自ら学ぶ習慣が「本物の頭の良さ」を育てます。
脳がほぼ大人と同じ状態になります。「自分でやりたい」気持ちが強まり「自己報酬群」が発達していきます。「自主性」が大事になります。
10歳~;努力したことに胸を張りたくなるようなほめ方を心がけましょう。
ここからが勉強適齢期です。頑張っていたら「すごいね!」とほめて、子どもの自尊心を刺激していきましょう。
(林(はやし)成(なり)之(ゆき)日本大学医学教授 『PHPのびのび子育て』2013.12月号)
「はやくはやく」「もっと上手に」「もっと立派に」などと追い求めてばかりでは、子どもも親も疲れてしまいます。発達段階を順に追ってじっくりと進んでいくことが大切ですね。あと、この発達段階は、あくまで「平均」「標準」であり、個人差もたくさんあることは、頭の片隅に入れておきたいですね。

今、自分で考えられる子が減っている!

「一般に生活が便利・豊かになると、人は工夫したり節約したりしながら生活する必要が次第になくなっていきます。この「工夫する」「節約する」ということがすなわち「考える」ということなのです。」そして「親がわが子の教育に熱心になるあまり、あれこれ指示することが増える場合は問題です。親が具体的に指示して従わせようとすることは、「考えるのはお母さん。あなたはお母さんの考えに従えばいいのよ」というメッセージを送ることに他ならないからです。これでは子どもの自ら考えようとする力は身につきません。考えるというのはもともと「自ら」考えるということ。その力を身につけさせるためには、あらゆる場合で、子ども自身に考えさせるようにていねいにかかわり続けるしかないのです。
幸い、人間には考えたいという本能のようなものがあります。幼い子どもほどそれが豊かです。考えたいというのは「もっと工夫したい」「もっと楽にしたい」「もっと面白くしたい」などという気持ちが生み出すものですから、そういう状況をつくるように配慮すれば、子どもはどんどん考え出すのです。」(汐見稔幸(しおみとしゆき)氏・白梅学院大学学長・『PHPのびのび子育て「考える力」が育つ最高の習慣」』2011年6月号24~25ページ)
子どもを「信じて」「任せて」「黙って」「待つ」(同書56ページ)ことが、難しいですが大切なのですね。

逆説の子育て・手元の物で考え遊ぶ

出来合いのおもちゃばかり与えると、子どもは創造力を発達させないのではないかと考える教育専門家は多くいらっしゃると思います。私もアナログ系タイプの人間としてそうした考えに同意し、スマホやゲーム機器で決まり切った方法・ルールで遊ばされている今ドキの子どもたちを心配していますが、教育ジャーナリストおおたとしまささんは、いろいろと楽しい手作り遊びを紹介していらっしゃいます。
「例えば手元に一本のロープがあるとします。どんな遊びができるでしょうか。縄跳びも電車ごっこもできるでしょう。床に土俵をつくってお相撲をしてもいい。ロープを何重にも結んで団子状にしてそれをほどかせる遊びも、知恵の輪みたいで面白いですよ。新聞紙ではどうでしょう? チャンバラごっこは定番ですね。ボール状に丸めてゴミ箱めがけてシュートすれば、「ゴミ箱バスケット」になります。ひらがなを練習中なら、「このページの中から『か』という字を探してごらん」と言って文字を探させても盛り上がります。」「手元にあるものを使ってどれだけバリエーション豊かな遊びを発想できるか、親のセンスが問われるところです。子どもに創造力のお手本を見せてあげましょう。そうすれば、きっと子どもも、創意工夫ができる人になるはずです。」(岐阜新聞2014年8月29日)

さすがは教育ジャーナリストですよね。この考え方ならいくらでも手元にある物で遊びを作れそうですね。

子どもの知能を伸ばすドーパミンを出す「ワクワクドキドキ」

「子どもは親同士が会話をしていたら、意味や内容はわからなくても聞いているものです。お父さんが観ているテレビを観てもいるし、お母さんがキッチンで料理している音だって聞いている。つまり、家の中の日々の出来事からさえ、子どもというのはたくさんの刺激を受けているのです。そして、それによって脳の中ではドーパミンを出す神経回路が次々とつくられていくのです。」(『5歳までにやっておきたい本当にかしこい脳の育て方』茂木健一郎著・日本実業出版社・35頁)「ご両親が本をたくさん読んだり、いろんなニュースに敏感だったりする勉強熱心な家庭では、子どもも「学びたい」という欲求を強く持ち、またご両親が外出を好み積極的にいろいろなところに出かけていく家庭では、好奇心や探究心の強い子どもに育つのです。そこに家庭の経済格差は関係ありません。」(同書38頁)「乳幼児は両親が思っている以上に親の顔をよく観察しているもので、アメリカの心理学者アンドルー・N・メルツォフは、生後数週間の新生児であっても、すでに大人の表情をまねするという「新生児模倣」現象を証明・報告しています。昔から「子どもは親の背中を見て育つ」といいますが、いうなれば、子は親の心を感じて育つのです。親の笑顔やポジティブな心を感じると、子どもは感情表現が豊かになり、ワクワクドキドキしやすくなるので、ドーパミンも出やすくなります。」「両親がフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを意識するだけで、子どもに笑顔がどんどん増えていきます。」(同書159~160頁)
まずは、ごくごく身近な日常生活を興味深く丁寧に見つめていくことが大切なのですね。