ホッとできる先人のことば

子育ては、喜びもありますが、なかなか自分の思い通りに行かないことが多くて悩むことも多々ありますよね。そんなときに、読むと元気づけて慰めてくれる詩があります。

「子育てまっ最中のお母さんへ

子育ては一生懸命すぎても
楽しさが感じとれない
子育ては大変
大事業です
だけど肩の力を抜いて
楽しくやって欲しい
“これでいいのかな”って
わが子をみて不安になったり
心配になったりする時も
あるかもしれない
でも
そういう謙虚さも大切です
ちゃんと我が子を
みつめているわけだから
“大丈夫です”
今どん底に見えても
気付いてからスタートしても
大丈夫です
マイナスをいくらでも
プラスに変えられます
マイナスが多いほど
プラスが増えることもあります
子育て応援してます
大変なのわかっています
なかなか自分の時間がなくて
思うようにいかなくて
ストレスもたまって
時にはイライラしている自分に
落ち込んで
でも
子どもの笑顔・寝顔
可愛くて
抱きしめたくなりますよね
子どもは宝
どんなに親を
成長させてくれる事か
子どもとの日々の生活が尊いし
大切なのです
いつも温かく見守り
いつもあきらめる事なく
可能性を信じ
精一杯愛してあげてください
その子なりのお花を
精一杯咲かせればいいのです」
(『お母さん 子どもの心の声が聞こえますか』柴田よしゑ著・文芸社)

何度もふりかえり読み返したい詩ですよね。子の自ら伸びようとする力を信じて、子がいてくれるから子育てという貴重な事業に参加できるのだ、という感謝の気持ちも持てますよね。

ホッとできる先人のことば

本ブログの1回目に、大正から昭和初期にかけての日本の幼児教育をリードした倉橋 惣三(くらはし そうぞう)氏のことばを紹介しましたが、その理念・業績を受けついだ津守真(つもりまこと)氏(元お茶の水大学教授)の考えにも、保護者としてホッとできることばがあります。
「子どもが障害をもって生まれるのは稀(まれ)なことではない。そのときにも、日々子どもが望むことに応え、配慮をもって関わることの大切さに変わりはない。障害にだけ目をとめて心配しすぎないように、毎日を大切に育てよう。
最初の人間関係を通して、子どもは自分自身と人間と世界に対する信頼を学ぶ。成長の途上には自らの存在をおびやかされる機会は多くあるが、周囲に対して不信感をもって人生を出発させるのか、世界は基本的に信頼し得るものと確信して生きるのかによって、人生はまったくちがったものになる。
子どもとの信頼関係をつくることが、子育ての第一歩である。」
(『子どもの生活 遊びのせかい ~4歳までの成長と発達/親子でたのしく暮らす工夫~』津守真著・婦人之友社1996 P7)
子どもとは、「全面的に大人に依存する存在」です。子どもの要求に誠実に耳を傾け、子どもができることは自分でやらせ、できないことはゆったりと手をさしのべる、そんな毎日の生活が信頼を育んでいくものと思います。

ホッとできる先人のことば

園長である私自身、ただ今「イクメン」真っ最中の身で、第一子を賜って、すぐに役立つ保育論をさがしていたときに、貴重な先人の考えに出逢いました。

<児童精神科医・佐々木正美(ささきまさみ)氏の考え

「乳幼児期の育児は、ひとことでいえば、子どもの要求や期待に、できるだけ十分にこたえてあげることです。せんじつめればそれだけのことです。しかし、それがなかなか十分にできないのです。そして、子どもの要求にこたえてあげて、こちらから伝えたいことは、「こうするんでしょ」とおだやかに何回もくり返し伝えればいいのです。

親や保育者の希望ばかりを、子どもに強く伝えすぎてしまう。賞罰を与えたりして早くいい結果を出そうとしたり、大人のほうが楽をしようとする育児がよくないのです。

つぎの時代を生きる子どもたちに、十分に愛されることの喜びを与えること、育児はそれで十分なのですね。人間は愛されることから、生きる喜びを感じはじめるのですから。」

(『子どもへのまなざし』佐々木正美著・福音館1998・P19~20)

乳幼児の保育の要(かなめ)を、端的に・正確にスパッと言い切られた名言だと思います。今の世には「早期教育」という焦(あせ)った教育の危うさがあります。このことを警戒しながら、子どもの能力・発達段階を見極め尊重し、それに合わせて、無理させずやれることを大いにのびのびやれる環境におくことを心がけていきましょう。

子育て中のお父さんお母さんへ

【無財(むざい)の七施(しちせ)】

仏教には、人を幸せにする(施(ほどこ)し・布施行(ふせぎょう))とそのことが自分にとっての幸せとなる、という考えがあり、「無財の七施」という教説がよく話題になります。大きな財産を持たない者も、考え方・心の持ち方次第で、他者を真に喜ばせる七種類もの大切な奉仕活動がたやすくできる、と説くもので、現代の社会生活でも保育活動の中でも、まさに金品のやりとりにたよらない本質的な愛情の表現そのものと言ってもいい貴重な心得だと思います。
①身施(しんせ) 身体を動かして他者に尽くす(奉仕)活動で、バス・電車の中で必要な人に席を譲ったり、落とし物を知らせたり届けたり、などなど日常生活でも心がけ次第でたくさん見つけられると思います。
②心施(しんせ) 他者や他の存在に対する思いやりの心で、①や③以下の様々な施しの一番のおおもととなると思われます。
③眼施(げんせ) 優しいまなざしで、そこにいるすべての人の心が和(なご)やかになります。「眼は口ほどにものを言う。」という諺(ことわざ)もあります。
④和顔施(わげんせ) 柔(にゅう)和(わ)な笑顔を絶やさないことです。いつもニコニコしている人の周りには、温かい心と笑顔が広がっていきます。仏教語でこういう人を「一隅を照らす人」と表現しますし、ことわざで「笑う門には福来(きた)る。」とも言いますよね。
➄言施(ごんせ) 「思いやりのこもったあたたかい言葉をかけること」と聖典現代語訳本には記されて(解説されて)ありますが、私はそれ以上に、自分が嬉しく感じた体験の話しを家族・知人に聞かせたり、自分の意見を大いに前向きに語り合うことにより、話す側・聞く側双方の幸せ(感)を増すことと受け止めています。
⑥牀座施(しょうざせ) 自分の席をゆずることによって、お互いに温かい気持ちになったり、仲間意識を高めたりすることです。
④房舎施(ぼうしゃせ) わが家を一夜の宿に貸すこと。これは、ホテルも旅館もないお釈迦様の時代(2500年前)に、修行者や旅の商人たちの求めに快く応じて宿泊の場を提供することがあったようです。
(出典『雑宝蔵経』(『仏教聖典』仏教伝道協会編1975))
以上、7種の布施行をお釈迦様がすすめておられますが、②の真実の心(気持ち)の施しがあっての①身体の奉仕 ③目つき ④顔つき ➄優しいことば、などなので、これら7種は別々のものではなく密接に関わっていると思います。

子育て真っ最中のお父さん・お母さんへ

乳幼児の子育ての最も基礎的な心得は、人の自然な感情である子どもへの愛情である、と本ブログ第一回(前回)に書きました。こうした思いを、古今東西数多くの教育家たちが説き述べていますが、現代の子育て環境の中でたいへん有名になったベストセラー書『子どもが育つ魔法の言葉』(ドロシー・ロー・ノルト著・PHP研究所)には、とてもわかりやすい子育て上のアドヴァイスがあります。

「愛してあげれば、子どもは、人を愛することを学ぶ
認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる
子どもに公平であれば、子どもは、正義感のある子どもに育つ
守ってあげれば、子どもは、強い子に育つ
和気藹々(あいあい)とした家庭で育てば、子どもは、この世はいいところだと思う
叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子だ。」と思ってしまう
不安な気持ちで育てると、子どもも不安になる
子どもを馬鹿にすると、引っ込み思案な子になる etc 」

いかがでしょうか?
幼い子ほど、人間的な環境の人格・性格形成への影響力が大きい、ということがうかがえることばだと思います。
乳幼児期は、心豊かな人間形成のための大切な基礎づくりの時期です。愛情・思いやりたっぷりの環境の中で、お互いに思いやり助け合って生きる喜びをたくさん感じていけるよう、精いっぱい支援していきたいものですね。