直観力について

これまで、「学ぶ力」を育てるというテーマでいろいろと考えてきましたが、知識の多いことだけを良いことと評価する知識偏重の教育のあり方に疑問も感じ、子どもたちの自然な感性・疑問を大切にしたいと考えていました折り、『「直観力」の豊かな子どもは幸せだ~おおらかな人生のために大切なこと~』という本を見つけて読んでみました。(ソニア・チョケット著・PHP研究所刊2000年)この本の要点は、「親子ともに真の幸せな人生を歩むには、保育者自身が自己の直観力を信じ豊かに育むことが大切です。具体的方法としては、
①身辺を整理整頓しすっきり・シンプルにする。
②深呼吸し心を落ち着ける。
③自然の中を歩く。
④家族で夕食を食べる。
⑤忙しすぎないように生活設計をする。
⑥自己の内にある自分の制御(コントロール)を超えた大いなる声に気づき、心の耳で聞く。
といったことです。これにより子どもたちを個人として認め、関心を持って温かく見守り子どもに発言(権)を与え、環境に支えられ守られ導かれている自分を見いだしホッと安らかな気持ちになれることにより、偽り・見せかけでない真の自分を発見していける、ということでした。
キリスト教の影響がある考え方のようですが、たいへん貴重な考えのように思えます。子ども・保育者ともに直観力をはぐくんでいくためには、やはり環境設定の方にもなにがしかのノウハウがあるのですね。

 

「臨界期」の問題について

さまざまな教育論の中で、「臨界期(りんかいき)」という問題が話題になることが、しばしばあります。人間の子どもたちは、乳幼児期から学童期・思春期・ハイティーンに至るまで、母国語の読み書き・聞く・話す能力、計算能力、運動能力、音楽・絵画などの芸術能力など、さまざまな能力を身につけ発達させていきますが、それぞれの能力につき、生涯通用する・もしくはプロフェッショナルレベルの能力のためのしっかりとした基礎力を身につけるために最適な時期がある、と考える発達論上の考え方が「臨界期」という考え方です。
この問題について、最近の啓発書では、発達心理学者の池田清彦氏の著書『すこしの努力で「できる子」をつくる』(講談社文庫2006)という本で論じられています。池田清彦氏は、脳科学の成果をもとに、言語能力・スポーツ能力・音楽・将棋・囲碁・計算などの能力の臨界期を示しておられますが、いずれもやはり3才ころからの豊かな養育環境が重要・大切だと指摘されています。
昔から「三つ子の魂百まで」「鉄は熱いうちに打て」「矯めるなら若木のうち」などという諺もあり、人類は、幼児期に周囲の愛情につつまれて無理なく丁寧に上質の養育・教育を受けることの大切さを見抜いてきたようです。
今は、「くもん」などの知的教育施設・学習塾・タブレット学習・ダンススクール・サッカー・野球・水泳などの習いごとが大流行(おおはやり)で、どれに通わせようか保護者の方が迷うほどありますが、あくまで子どもが「やりたい!!」と興味を示してこそ効果が期待できるもので、保護者・教育者からの強制では、まったく効果がないこと・百害あって一利ないことを肝に銘じておく必要があるでしょう。
また、多くの子どもたちには、相当の個人差・多様性もあって、すべてのこどもたちが一様に同じような興味・発達・成長・成果を見せることもありませんから、その子その子の固有の良さ・得意なこと・好きなことを尊重していく姿勢も大切でしょう。
池田清彦氏は以上のようなことを考慮し、「他の子とあまり比較せず、温かい雰囲気の中で、子が好きになったことを褒めて伸ばそう。」という割とオーソドックスな考えで結論づけています。本欄でこれまでからだ・こころ・ことばの教育を展開してきた中で、幼児教育学者・津守真(つもりまこと)氏の「日々子どもが望むことに応え、配慮をもって関わることの大切さ」という言葉を紹介しましたが、相通ずることなのですね。
「臨界期」の問題は、教育学・発達学的にはとても重要で興味深い研究テーマでもありますが、一般の家庭であまりにこだわりすぎて神経質になって不安感をつのらせるデメリットの方が大きいとも思いますので、池田氏のように、ゆったり大らかにかまえていった方がよさそうですね。

<幼児・小学生の学ぶ力を育むために心がけること・大事なこと・実践すべきこと>6

これまでは、後掲する最近の学習アドヴァイス書に書いてある内容をまとめて縷々述べてきましたが、今回は、勉強法についての、私なりの付け加え・持論といったことを述べてみたいと思います。
①学校の授業を大切にする・集中して受ける(夜に睡眠不足で昼・授業中に居眠りしていたり、「内職」している学生に、成果を上げている者はいない、とよく言われた。)
②まず、教科書を完璧にマスターする(しっかり理解する・法則を丸暗記するのではなく、その法則・理論が見出されるまでの過程を自分で説明・解説できるまで理解する)
③苦手教科・科目ができてしまったら、克服法は一つしかない! →恥を忍んで、わかるところまで立ち戻る!これしかない!!! できるヤツに(恥を忍んで)どしどし教えてもらおう!
④集中と弛緩(活動と休養)のけじめ・バランス
ある分野の勉強をやって疲れたら、別のこと・分野・ジャンルのことをやってみる。 例えば、頭を使って疲れたら、体を使う。好きな運動(スポーツ)(キャッチボール・サッカー・水泳など)でのびのびからだを動かす。
〈対立価値のバランス〉理性(ロゴス)と感情(パトス)・IQとEQ・左脳と右脳・動と静・交感神経と副交感神経・・・両端ともに大切。
⑤指導者・保護者からの押しつけ・強制は、全く効果ない。あくまでも、当人の自発的な関心が育つことが前提。

【参考書籍】
『子どもを伸ばす魔法の言葉』シャロン伴野著 コスモトゥーワン刊 1999
『小3までに育てたい 算数脳』高濱正伸著・2005・(株)健康ジャーナル社
『東大脳の作り方』安川佳美(東大・理科三類(医学部進学)に現役合格した女学生)著・平凡社新書2006
『子どもの脳にいいこと』鈴木昭平著 コスモトゥーワン 2009
『全教科の成績が良くなる 国語の力を親が伸ばす』高濱正伸著・2010・(株)カンゼン
『子どもの脳を育む!よい習慣』久保田競著 PHP 2011
『すこしの努力で「できる子」をつくる』池田清彦著 講談社文庫 2011
『へこたれない子、心のつよい子になる育て方』PHPのびのび子育て編集部・2013・(株)PHP研究所
『子どもが自分で伸びていく6つの習慣』八田哲夫著 経済界新書2013
『頭のよい子の親がしている28の習慣』苫米地英人著 だいわ文庫 2015
『自分からどんどん勉強する子になる方法』杉渕鐵良著 すばる舎 2015
『「賢い子」に育てる究極のコツ』瀧 靖之著 文響社 2016
『やってはいけない脳の習慣』川島隆太・横田普務著 青春新書 2016
『5歳までにやっておきたい本当にかしこい脳の育て方』茂木健一郎著 日本実業出版社2017
『脳に任せるかしこい子育て』菅原洋平・菅原未涼著・2018・(株)すばる舎
『こんなカンタンなことで子どもの可能性はグングン伸びる! 最新の脳医学でわかった!』瀧 靖之著 ソレイユ出版 2019
『子どもたちに大切なことを脳科学が明かしました』川島隆太・松崎泰編著 くもん出版 2022

<幼児・小学生の学ぶ力を育むために心がけること・大事なこと・実践すべきこと>5

【有益・有効な教材とは?】

④小学校・中学校の授業・勉強はその後の勉強のための基礎としてとても大切なので、決しておろそかにしない。
⑤ことばゲームを楽しもう
例:「あ」のつくことば、しりとり、「身体のことばいくつ言える?」その他「野菜」「飲み物」    漢字を習い始めたら、木偏(きへん)・魚偏(うおへん)・人偏(にんべん)など)
⑥プラモデル・パズルなども大いに! レゴ遊びも良い。(私は小学生・中学生のころ、レゴ少年でした。レゴ遊びにより、創造力の他、幾何学的な能力も養われます。)

⑦昔ながらの遊び・間違い探し・背中文字当てゲーム
・「隠(かく)しっこ」(宝探し・好きなぬいぐるみ探しなど)「ごっこ遊び」
・「自由度の高い」遊びが、脳をぐんぐん成長させる。例:自然の中で、一本の棒でいかに多様な遊びを作り出せるか? 既製品のおもちゃではなく。ボールあそびも多様に・創造的に遊べる(投げる・つく・転がす・受ける・蹴る・棒で打つ・的に入れる・的に当てる・など)
・コーナーゲーム・サーキットトレーニングみたいにやっても楽しい。
⑧多世代・多様な人々とのふれあいも大いにしてみましょう。ちょっと年上の子たちと遊ばせる(異年齢交流・集団)と脳はぐんぐん 育ちます。 子どもが本来持つあこがれ模倣欲求・競争欲求をうまく生かすことができます。

<幼児・小学生の学ぶ力を育むために心がけること・大事なこと・実践すべきこと>4

【有益・有効な教材とは?】

①音楽鑑賞・楽器演奏・歌う。クラシック音楽がいい(胎教にも特に「モーツァルトがいい」と言われます。) 時々でいいので、本物の文化・芸術を見せる・触れさせる。
「音楽」という以上、あくまで音を楽しむ・楽しい音・音で癒されることが基本です。音楽で他者を楽しませるプロになるのではない素人なら、苦労する必要はありません。好きなジャンルを大いに楽しみましょう。

②実体験を多く持ちましょう! 外で遊ぶ。生の自然に触れる。日常生活が学習・勉強=現物を見る(町・自然を歩く、など) (ヴァーチャルよりもリアル) テレビは制限して。ゲーム機・スマホ・インターネットは、自分の頭で考える力を伸ばさないので、できるだけ少なくしましょう! 高名な科学者や宇宙飛行士たちは、口をそろえて「幼少期には、自然に大いにふれあい、自然に対する子どもの「どうして?なぜ?見たいな!」を大切にしてください。」とおっしゃいます。

③本をできるだけたくさん読む。事典・カラー図鑑などもお奨めです。幼少期には絵本の読み聞かせを習慣化しましょう。 子どもにとって良書かどうかの決め手は、「何度読んでも楽しめる・癒される・元気づけられること、読み返すたびに新しい感銘・感動が与えられること」です。ちなみに私の小学生時代に好んだ一例は、『けんはへっちゃら』(谷川俊太郎作)や、アニメでは『ムーミン』です。(今、ネットでも観れます。)(本欄2022年10月14日公開文を参照のこと)

いずれも、「あわてず、あせらず、マイペースで、じっくりと、楽しみながら」をモットーにいきましょう。