<「早期教育」への警笛(けいてき)>

昭和の「高度成長」の時代から今日に至るまで、「早期教育」をうたう教育産業は、加熱の一途をたどって来ました。これは、大きく社会変動する現代の中で自然に発生する親の育児不安・教育不安にいわばつけこむ・あおる策略で進展して来たものです。

こうした親の不安感・教育への願いには、以下のようなものが考えられます。

  • 学校・クラスで落ちこぼれないようにしたい。
  • 高学歴をつけさせたい。
  • 英語をしゃべれるようにしたい。
  • 親が楽(らく)したい。
  • 親の面子を保ちたい。   などなど・・・

マスコミなどで、「卓球のオリンピックメダリスト・福原愛さんは、3才から卓球を始めた。」などと聞くと、気性の純粋な幼児のころに何でも始めさせた方が、将来のびる・大成するように思ってしまうのも無理はないのかな、とも思います。けれど、広く保育・教育に関わり、冷静・理性的な知見を発信している専門家の意見にも耳を傾けたいものです。

瀧靖之(たきやすゆき)氏(東北大学加齢医学研究所教授・医学博士)は、幼児・学童期には、子ども自身が好きになること・好奇心を持つこと・夢中になることを最優先にして取り組ませることをすすめていらっしゃいます。(社会的に承認されることであることという条件付きですが。)

(著書『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』文響社2016)

また、発達心理学の権威者・内田伸子氏(元お茶の水女子大学教授)は、「幼児期の本の読み聞かせをたっぷりと受けた子や、手先を使うブロック遊びが好きだった子は、小学校の国語の学力が高い。」「親子で楽しい会話をしていると語彙は豊かになります。」「早期教育にお金と時間をかけるより、子どもにふれ合い、遊ぶ時間をできるだけ確保することを考えるべきです。」とおっしゃっています。(朝日新聞2016年1月5日掲載)

本ブログでもこれまで、からだ育て・こころ育て・ことば育てについて、同様な内容をたくさん綴って来ました。ぜひとも(再度)お読みください。

モットーは、「子どもを信じて、あせらず、あわてず、じっくりと」ですね。

<ポジティブことば選び・その3>

前回・前々回の続きを、もう一度だけ載せます。

①(a) (つい言ってしまいがちなことば)「飽きっぽい」→(b) (望ましい言い換え語)「好奇心旺盛」

②(a)「頭が固い」→(b)「ぶれない」

③(a)「いいかげん」→(b)「鷹揚(おうよう)」

 

④(a)「お調子者(ちょうしもの」→(b)「ムードメーカー」

⑤(a)「協調性がない」→(b)「自主性がある」

⑥(a)「子どもっぽい」→(b)「童心を忘れない」

⑦(a)「能天気(のうてんき)」→(b)「前向き」

⑧(a)「無愛想(ぶあいそう)」→(b)「無口」

⑨(a)「理屈屋」→(b)「理論家」

(『ポジティブことば選び辞典』Gakken田沢あかね編2021より)

 

どのキャラクターも、私たちの身近な日常生活やいろいろな集団・組織の中でよく見られるキャラクターですよね。それぞれの多様な特徴・特性を懐広く受け入れ楽しみながら、豊かな人間関係を構築していきたいものですね。

もっと読みたい方は、図書館や書店で探してみてください

<ポジティブことば選び・その2>

前回の続きです。

 

  • (a)(つい言ってしまいがちなことば)「仕事が遅い」→(b)(言い換え語)「仕事が丁寧」

  • (a)「強引」→(b)「リーダーシップがある」

  • (a)「経験が浅い」→(b)「斬新(ざんしん)な発想ができる」

  • (a)「粗野(そや)」→(b)「ざっくばらん」

  • (a)「そそっかしい」→(b)「行動が早い」

(『ポジティブことば選び辞典』Gakken田沢あかね編2021より)

 

どれも日常生活でもありがちなスキットで、イラストもとっても面白いですよね。じっくり味わいながら、今後の私たちの生活でも考えていきたい問題ですね。

<ほめ達その6・ポジティブことば選び>

さまざまな人と接したり、協力・分担して仕事をしたりするとき、人それぞれには多様な性格・特性・能力があることに気づきます。それらの特徴はすべてその人の個性であり、状況により良く生かされれば有効・有益に働きます。逆に、周囲・環境が否定的にばかり評価したり対応したりすれば、その人の特性・本性は、伸ばされていきません。周りの人々・環境がどう評価し、どうほめことばを投げかけるかで、毎日の生活の充実度は、まったく異なったものになります。

ほめことばを見つけるのにとっても良い書物に出会いました。(『ポジティブことば選び辞典』Gakken.2021.田沢あかね編集)いくつか面白い例をあげましょう。

  • (a)(つい言ってしまいがちなことば)「諦(あきら)めが早い」→(b)(言い換え語)「いさぎよい」
  • (a)「往生際が悪い」→(b)「最後まで諦めない」
  • (a)「おしゃべり」→(b)「話し上手」
  • (a)「怪しい」→(b)「ミステリアスな」
  • (a)「感情の起伏(きふく)が激しい」→(b)「感情豊か」
  • (a)「口が悪い」→(b)「気取らない語り口」
  • (a)「口がうまい」→(b)「コミュニケーション能力が高い」
  • (a)「存在感がない」→(b)「縁(えん)の下の力持ち」

いかがでしょう? そういえば、「ものは言いよう、考えよう」ということわざもありましたね。

<ほめて育てるための具体的な方法> ~ほめる達人協会理事長・西村貴好さんから学ぶ~

《ほめ達の方法》

〈その1〉「子どもの話を聴くときに、目を見る、頷(うなず)く、相槌(あいづち)を打つ、繰り返す、感情を込める、メモを取る。」この最後の「メモを取る」というのは、あまりやられていないと思います。「子どもが大きくなった時にさりげなく見せて伝えてあげることができます。このように、「聴く」人も、その姿勢によっては大きなメッセージを話す人に伝えています。」

〈その2〉「子に対するほめことばをいくつお持ちですか?」このフレーズを読んだときに、私(加藤憲)は、ある小学校教員がおっしゃったことばを思い出しました。「家庭訪問か個人懇談の場などで私(教員)はこうお母さん・お父さんに尋ねます。「お母さん・お父さん、お子さんの良いところを10個挙げてみてください。」と。」なかなか難しい課題かもしれませんね。でも、普段からこのように心掛けていると、そのうちできるようになると思います。ほんの些細なことで良いんです。「オッ!!最近変わったな!」と思うことで良いので、メモしていってみたらどうでしょうか。「結果よりもプロセスを認めてあげることが大切です。これまでできなかったことができるようになったら、保護者としても嬉しいですよね。そこを即座に率直にほめてあげましょう。」

〈その3〉ほめことばベスト3

  • 4S「すごい!さすが!すばらしい!ステキ!」「かんぺき!」も良い。
  • 「惜しい」ここ直してほしいな、と言いたいときは、「惜しいな」と言われると、もう少しでできるんやな、と励まされてるように子どもは思います。「僕のこと、認めてくれてる、と感じさせることばです。
  • 事実プラス「ありがとう」

例「手伝ってくれてありがとう。助かったよ。」

私(加藤)は、以前、少年院の指導員の講演を聴いて、目からうろこが落ちました。犯罪を犯し少年院入りした少年に、この指導員が尋ねました。「君は、これまで家族やその他の大人から、「ありがとう」と言われたことはあるかね?」と。そしたら、その少年は、はきすてるように「そんなこと、一回も言われたことねえよ!」と言ったそうです。なるほどなあ!と納得しました。愛すべきことばは、人を育むのだなあ!!と合点しました。毎日、「ありがとう」「いいぞ!」「ステキ!」「惜しい!もうちょっと!」などのことばを、子どもたちにさんさんと降り注ぎたいですね。

(文章の出典は、前回と同じです)

「生理学研究所」の定藤規弘教授(脳科学)らの研究チームは、「他人に褒められると、意欲や意志決定に関わる「綿条体」と呼ばれる脳の領域が反応することを確認した。さらに、褒められた人は、指を使った運動技能の習得が上手になることも確かめた」そうです。(朝日新聞2016年9月8日記事)