「子どものヤル気の芽を育て、持てる才能を充分に発揮させたいと、どの母親も念じています。
ヤル気があれば脳の働きもよくなるのは誰でも体験していることです。才能をひきだし成果をあげるのもヤル気の問題なのです。頭が良い悪いの生まれつき差は一般的にはそれほどないのです。頭の使い方次第なのです。
だから誰でもヤル気さえあれば大成果をあげ得る可能性を充分に持っているのです。母親の一言で二倍以上の人生がおくれるのです。」(前掲書・139ページ)
この文章は、本稿のタイトルそのままの「第五章」(前掲書)のとびらに書いてある文章です。この文章を読んでかなり似た主張をしている自然科学の世界的権威者の最近の著書の文章を思い出しました。その権威者とは、遺伝子学者・村上和雄氏(1936年~2021年)です。氏の最後の遺稿となった『コロナの暗号』(2021年・幻冬舎)の中では、
「いままで脳の働きは先天的に決められていると考えられていましたが、そうではありません。眠っている遺伝子をONにすれば誰でも天才なのです。なぜなら、人間のゲノムは天才も凡才も99.5%以上は同じにできているからです。しかも環境変化や心の持ち方でも遺伝子ONは可能です。」「私は研究を行う過程で生命設計図の精緻さに心打たれ、DNAに暗号を書き込んだ何らかの『存在』を感じ、それをサムシング・グレート(大自然の大いなる力)と名づけました。」
村上氏の言う「サムシング・グレートSomething Great」とは、仏教やキリスト教で言う絶対者・超越者(仏・神)が強く発している「利他主義・思いやり・つつしみ・協力」といった心であり、そういった目に見えにくいし手でさわったりつかんだりしにくいが必ず誰もが聞いたり実践したり実践されたり経験することの可能な心性(メンタリティ)のことであります。現代の最先端の科学者も、こういうものを想定しないと理論的に説明できない科学現象がたくさんある、と言われるのです。大人・子どもを問わず、私たちの遺伝子スイッチをONにして最大限に才能を開花させていくには、サムシング・グレートを大切にしていけばいい、ということになるのです。
子どもへの具体的な母親のことばとして、宇佐美氏は以下のようなことばを挙げています。
- 「よくやるのね。すごいわ」
- 「よく知ってるのね。お母さんにまた教えてよ」
- 「よい子ね。お母さん幸せよ」
- 「人生は長いのだから気にしなくていいのよ。あせらず頑張りましょうね」
- 「不得意なことを気にしない。得意なものを伸ばそうね」
- 「あなたならできそうよ。この前だってやれたのだから」(前掲書・141~165ページ)
みな、前向き・上向き・ポジティブシンキングのことばがけですね。こういったことばがけが、子どもたちを劇的に変える「環境変化」なんですね。




