「みんなちがって、みんないい」「ナンバーワンより、オンリーワン」

コロナ禍の厳戒態勢の中、東京パラリンピックも無事に全種目を終えることができ、9月5日に閉幕しました。

手や足を事故や病気でなくしたり先天的に機能しなかったりなどの身体的障がい、あるいは視覚・聴覚や精神的な障がいなど、さまざまなハンディキャップを背負いながらも、私たちの想像を絶する強い夢・志をもちすさまじい努力を積み重ね、周囲の人たちの支えも得られ、それぞれの部門・競技でのトップクラスに登りつめることができた姿に、また大きな感動をもらった方々も多いのではないでしょうか。

選手たちのことばには、とことんやり尽くしたという達成感からの真実の心がしみ込んでいて、私たちを感動させます。そのいくつかを記してみます。

➀「できることがどんどん増えていくのが楽しい。」

➁「努力は人をうらぎらない。」

➂ある解説者の言「あの選手は、(自分の中に)リミッターlimiterをつくらないんですよね。それであれだけ伸びたんだと思います。」(limiter:制限装置)

選手が順位の結果にとらわれすぎないで、自己のベストをつくした達成感にあふれ、すがすがしい笑顔でインタヴューに応じていたり、40代・50代の選手が入賞・優勝したりする姿を観ると、それぞれの夢に向かって自分のよさを伸ばすため努力を尽くせば、素質や年齢に関係なく偉業を達成できるのだなあ、と改めて学ばせてもらえます。

仏教詩人・金子みすゞさんの「みんなちがって、みんないい。」の広く深い真意がまた、生き生きと伝わってきました。

子どもたちの自尊感情(自信感)を育てる

少し前ですが、岐阜新聞の教育記事で「子どもたちの自尊感情(自信感)を育てる」という文章がありました。(2012年8月13日NPO法人「フリースペースたまりば」理事長・西野博之氏筆)

「子どもたちの生活・活動には多くの失敗がつきものであり、安心して失敗できる環境をつくることが大切である。子どもは丸ごと受け止められているという安心感を持った途端に元気になる。」「不登校やひきこもりの青少年に対して、親がやっきになって何とか学校や社会に出させようとこだわっている間は動こうとしなかったが、親が「まあ生きてくれたらいいか。」とあきらめた途端、自分から動きだすことがよくある」ようです。「無事で生まれて!」と願った「あの日」の気持ちを思い出し、「あなたがいてくれるだけで嬉しいよ。」というシグナルを子どもたちに伝えて欲しい。」とのことでした。
子育ては決して理屈(りくつ)ではなく優(すぐ)れて人間的なもののようですね。

子どものよさ

本欄で何度も話題にしていますが、増田修治さん(白梅学園大学教授)が新聞紙上で、とっても心が温かくなる子どもの詩を紹介しています。まずはじっくりと読んでみてください。

お父さん         小学4年 江守慶介

お父さんは、
朝早く会社へ出かけて、
帰りもとてもおそい。
だから、休みの日以外は、
ごはんもいっしょに食べられない。
月曜日から金曜日まで、
お父さんに会わなかった時もある。
土曜日になってお父さんに会うと、
何だかはずかしくて話ができない。
本当にたまにだけど、
お父さんの体をマッサージしてあげた時は、
とてもいい気分になりました。
それは、
「ありがとう、慶君。
体のつかれがとんでいったよ」
と言ってくれたからです。
がんばって、お父さん。

(岐阜新聞2015.4.21)

いかがでしょうか? 素朴な内容ですが、とっても心が温まる良い詩だと思います。幼児たちには、まだこれほどの親を思いやることばを発することはできませんが、同じ心をいつも抱いていることと思います。紙上でこの詩を紹介されている増田修治さん(白梅学園大学教授)も「親も子も、どちらも同じように相手をいたわり合って生きているのです。」とおっしゃっています。
それぞれのご家庭で、オリジナルな温かいふれあいのひと時をおすごしください。

子どものユーモア

本欄でここ数回、子どものユーモラスなことばについてとりあげてきましたが、ある日に園で子どもの成長をあらためて実感した一つのエピソードをご紹介します。当園はしたが風邪ぎみだったので職員室でお母さんのお迎えを待っている年少児Aちゃんに一職員がたずねました。「この間亡くなったAちゃんの大きいおばあちゃんってどこに住んでいるの?」(この職員は大きいおばあちゃんがAちゃんと同じ家に住んでいたかどうかを聞こうとしたのです。) すると、Aちゃんは「おばあちゃんは天国に行ったの。」と言いました。
ユーモラスな感じを理解していただけるでしょうか? この職員は「大きいおばあちゃんはどこに住んでいたの?」と聞くべきだったのでしょうが、先生の質問に一生懸命に正確に答えようとする子どもらしい真面目さ・ひたむきさがかもし出すユーモラスさに、近くで一緒に聞いていた主任と私(園長)は思わず吹き出してしまいました。
子どもたちとの生活では、お互いの知識・経験・感性等の違いから、こうした会話上のユーモラスなちぐはぐさに笑えてしまうことってたくさんありますよね。こういうときは、子どもと一緒のレベルで批判したり「上から目線」で「指導」したりせず、大人のより高く広い視点からおおらかにほほえましく受けとめてあげたいものです。

2014年5月11日から毎週日曜日に、岐阜新聞で「笑いによる健康のすすめ」をテーマに連載記事がありました。「日本笑いヨガ協会」というものがあり(ネットで検索できます)、その代表の高田佳子さんが書かれたもので、いくつもの新鮮な提言を読ませてもらえます。「笑いは自律神経を整え、免疫力を高め、血糖値や血圧を下げたり、ストレスホルモンもおさえる効果がある。内臓の筋肉をマッサージし活性化し快眠・快便・快食につながる。」「嬉しくなくても、飛行機のように両手を広げて「ハハハハ・・・!」とバカになって笑う動作をしてみる「笑い体操」」、「びっくりしたり、失敗して落ち込んでも笑ったり、怒りの感情がこみ上げてきても笑って放出してしまおう!」など、常識をポーンと越えてしまう提言がたくさんあります。
そのまま全部実行することは無理かな…?とも思えますが、失敗した時も少し視点を変えて、「喜怒哀楽・悲喜こもごもあるのが人生かな。」と大らかに心を持ち直してみると、笑ってショックな気持ちも放出してしまい、またやり直してみようと思い直すこともできそうな気がしてきます。
常識外れのユーモアの天才は実は子どもたちです。大人の側が大いに子どもたちの並外れたユーモアに癒やされたり元気づけられたりという日々の生活があると良いですね。

家庭にユーモアと笑いを

まず下の二つの詩をお読み下さい。

 

「若い?」 S・N

私が

お母さんのあとをおっていると、

髪の毛の色がハデだから、

うしろから見ると、

少しだけ若く見えました。

でも前から見ると、

どこにでもいるような

おばさんでした。

 

「こたつの犯人」 M・M

今日のお母さんが

こたつのスイッチを見て、

「こたつ、つけっぱなしだれ?」

とおこっていた。

弟とぼくはどっちも

「ちがう!」と言った。

その時パパが、

「あ~、オレオレ。」と言った。

いきなりお母さんは、

「あっ、ほんとー。」

とやさしくなってスイッチを消した。

どうしてパパにはやさしいの?

 

これは、前回の本欄でも取り上げました増田修治氏(元小学校教諭で現在白梅学園大学准教授)が、クラスで子どもたちに詩を書かせて、皆で評論する授業の中で出てきたとてもユーモラスな多くの詩の中の二編だそうです。(『子どもの自尊心と家族・親と子のゆっくりライフ』汐見稔幸著・金子書房2009) こんな詩がどんどん出てきて皆で味わい楽しみ合うためには、クラス内でかなり上質の信頼関係が築かれていることが必要なのだろうと思われますが、家族内でも目標としたい話しですね。