<幼児期の性教育③>

 

最近は、性教育についての考え方も進歩してきて、昔は聞かなかった「プライベートゾーン」ということばが言われて子どもたちに教えることが勧められています。

「プライベートゾーン」とは、体の内部とつながっている直接、妊娠・出産・生命に関わる場所で、他人が勝手に見たり触れたりしてはいけない場所です。具体的には、口・胸・おしり・性器のことで、子どもにはわかりやすく、「水着で隠れる場所と口はプライベートゾーンだよ!」と教えると良いと言われています。たとえ親でもダメ!と教えます。なぜなら近年、性暴力による被害は家庭内でも起こっていると指摘されているためです。

では、プライベートゾーンについて、どんなことを教えていけば良いのか? 6つのポイントを解説します。

①プライベートゾーンは自分だけの大切な場所!

②触って良いのは自分だけ! ただし触るときはきれいな手で!

③誰かが見たり触ろうとしたら「いやだ!」と言ってよい

④人のプライベートゾーンを見たり触ったりしてはいけない

⑤プライベートゾーン以外の場所も自分の体は大切な場所!

⑥誰かに見たり触られたりしたら信頼できる大人に相談する

(ネットからの情報ですが、最近の常識的・良識的な情報だと思います。)

<性教育について②>

性・生殖・出産という生理的問題は、私たちの生命(いのち)の根本問題であり、生物学・人類学といった科学的にも驚異・神秘に満ちた現象であり、決していいかげん・オチャラケにすませていい問題ではありません。新しい生命(いのち)を授かる不思議さに私たちがまず驚き、喜び、その生命の要求・声・訴えに真摯に耳を傾け見つめていくことから始めなくてはなりません。

埼玉大学の田代美江子教授(ジェンダー教育学)は、人権を基盤とした性の教育「包括的性教育」が、これからの時代はすべての人々が学ばなくてはならないと訴えられています。

「人権」と言うと、難しい法律やややこしい裁判の問題、あるいは何でもかんでも要求したもん勝ちといった贅沢なイメージがつきまといがちですが、人権とは、大地震や暴風雨といった自然災害や、戦争などの人為災害などの時に失われがちな、衣・食・住や生業(なりわい)の最低限の条件・機会を奪われないように、社会全体が協力してお互いに守り合っていこう、という発想からつくられていくさまざまな社会の約束ごとのことです。人があたりまえに感じ、考え、愛し、求めていくことを尊重し、他からの何らかの障壁が加わることを取り除こうという考え方です。

そのためには、さまざまな学びが必要となります。「包括的性教育は、体の発達や生殖などの生物学的な面に加え、ジェンダー平等や性の多様性といった社会・文化的側面を含め、幅広く性を学びます。自らの健康や安全について考え、より良い人間関係を築き、幸せに生きるための選択ができる力を育むことを目指します。」

(田代美江子氏・朝日新聞2023年11月29日)

ここ30~40年くらいで小中学校での教育も、かなり変わってきているようです。ネットや新聞などでも学習を進めていきたいですね。

<性教育について>

幼少期の子どもが成長するにつれ、男女のからだの違い・大人と子どものからだの違いに気づき、興味をもったり大人に率直に質問したりすることはごく自然なことなのでしょう。「赤ちゃんはどのように生まれてくるの?」「赤ちゃんはどうやってできるの?」など、性に関する子どもの率直(ストレート)すぎる質問に、大人の方がドギマギしたり、とっさの答えに窮したりすることは、これもよくありがちなことです。返すことばに困って、「そのうちわかるよ。」などと変にはぐらかしたり、「そんなこと、子どもは知らなくていいの!」などと押さえつけた経験をお持ちの方やそんな例を見聞きした方も少なくないのではないでしょうか。

性の問題は、私たちのいのち・人類の種の保存の問題でありますから、人生・人類の大きな根本問題の一つでありながら、日本の教育界では、これまで性教育について真摯に真正面から取り上げてこなかった歴史があり、近年それを反省して、幾多の専門家・論者が声を上げて自論を新聞や著書で展開しています。欧米やその他の他国の例も参考にしながら、公教育にも取り入れられつつあります。本欄でも、個別の問題や、原理的な問題など少しずつ取り上げながら考えていきたいと思います。

次回以降を、お楽しみに。

岐阜市内の小学校の教科書『みんなのほけん3・4年』(29頁)

<ひきこもりやニートになる人生を避けるには>

子どもが幼児期から小学校へ進学すると、やはりどの親さんも学校に早くなじんで、先生や友だちと親しく好ましい人間関係をつくっていってほしい、と願うのが本音だろうと思います。しかし、現代の学校とは、明治5年に明治政府が「学制」を制定して以来150年の、近代社会特有の教育制度であり、子どもたちの多様な個性・興味関心・得意不得意の能力をいったん捨象(しゃしょう)(棚上げ)してつくりあげられたものなので、そもそも無理を背負って運営されているものです。ですから、不登校・いじめ・ネット上の誹謗中傷などの事件が後を絶ちません。

「「子どもに将来ひきこもりにならないでほしい」と心配している親御さんも多いはずです。受験、就活、仕事などの失敗が要因になるケースもあるので、失敗から立ち直る力、つまりレジリエンス(※)を高めておく必要があります。レジリエンスの基礎になる自己肯定感(じここうていかん)を育むようにしましょう。

学校や職場の人間関係がうまくいかないことが要因になるケースもあります。人間関係の基本は他者信頼感とコミュニケーション力なので、親子関係をよくしてそれらを育んでおきましょう。

特別なことをしなくても、自己肯定感と良好な親子関係のふたつを大切にしていれば大丈夫です。」(『ずるい子育て』親野智可等氏著・ダイヤモンド社・2024・232~233頁)(※resilience:①弾力性②回復力、快活、元気)

これまで「非認知能力」について縷々述べてきた課題である、①自分の好きなことにトコトンのめりこむこと、②家庭での安心・安全な環境、③間違い・挫折もおおらかに受容され、再挑戦に励まされること、につながって来ましたね。

<挫折・失敗への対応>

前々回まで4回ほど論述していた「非認知能力」の話に戻りましょう。

大人も子どもも、日々の生活の中で、失敗も挫折も数多く体験します。思った通りにうまくいかず悔しい思いをしたり、落ち込んだり、という経験は誰しもありますが、そんな時、周囲の人的環境が恵まれていると、立ち直り(レジリエンス)が早くたやすいものです。

「子どもの挫折は、立ち直る力を育てるチャンス

子どもが試験に落ちたり試合で負けたりと、思った結果が得られず挫折したときの対応はとても大事です。子どもの気持ちに添って対応することで、「立ち直る力」が育つきっかけになります。

そっとしておいてほしい子には、むやみに話しかけないほうがいいかもしれません。それでも、見守ることは必要です。

くやしい気持ちを吐き出したい子なら、共感しながら聞いてあげてください。結果はどうあれ、がんばったところをほめることが大切です。努力が足りなかったなどと責めると立ち直りにくくなります。親自身の挫折体験を話してあげるのもいいかもしれません。子どもにとって、挫折経験は自分を見つめ直して成長する機会でもあります。」(『ずるい子育て』親野智可等氏著・ダイヤモンド社・2024・P222~223)

 

 

 

 

 

 

これを読むと、子どもの性格をふまえた対応が必要だということがわかりますね。

同様に、失敗や間違いにおびえずのびのび・大らかにチャレンジすることの大切さを説いている絵本があります。

「みんなどしどし手をあげて まちがった意見を言おうじゃないか まちがった答えを言おうじゃないか」(『教室はまちがうところだ』蒔田晋治著・子どもの未来社・2004・P2)

学校・幼稚園では、授業でも生活上でも、毎日さまざまな課題に直面し、子どもたちは否が応でもチャレンジしていかなければなりません。そんなときも、この絵本の真の意図を思い出しながら取り組むと、気が楽になって思い詰めすぎずに取り組めますよ。