子どもや私たちの健康やからだ育ての話を続けてきました。今後は、こころ育ての話をしていきたいと思います。
詳細・具体的な話題を出す前に、教育の三本柱(➀からだ育て➁こころ育て➂ことば育て)の関連の深さを顧(かえり)みておきたいと思います。この3つは、それぞれ別ものではなく、互いに密接に関係しているものです。一つの具体例として、「交通安全の規則を守る」という道徳を身につけられるか?というこころ育ての問題を考えても、道路や駐車場にはどんな乗り物があってどんな危険があるか?ということを正しく知らなければ、安全のためにどんなことを心がけなければならないか?ということを理解できませんし守ろうという気持ちも起きませんよね。これが、知識・理解力が、善への意欲・悪の回避という道徳性を導く、という例です。逆に、愛され・大切にされて幸せ感を感じていればこそ(こころ育て)、生活上で湧き上がるさまざまな疑問をやりすごしてしまわないで、大人・教師に「何で?」「どうして?」「○○って何?」という知的な質問をぶつける意志・意欲が育つ、というのが幼児期・児童期の特徴です。これが、自然な感性を尊重されていると、知的な好奇心が育ってくる、という「道徳性が知性を導く」という例です。また、「健全なる精神は健全なる身体に宿る」「衣食足って礼節を知る」などのことわざの通り、健康や適切な生活状況という基礎の上に知的探究心・芸術性・道徳性などの高位の精神活動が展開される、ということも広く認められていることだと思います。
三本柱は「鶏が先か?卵が先か?」の永遠の問いと同じで、どれが一番大事、と決められるものではなく、循環的に関係・因果しているものだとも思います。
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スポーツについて
これまで「からだ育て」のテーマで、食育・睡眠その他の諸問題について考えてきました。今日は、「体育・運動」について考えましょう。
2021年夏・2022年冬とオリンピックが続きました。世界トップクラスの各種スポーツの選手たちの活躍ぶり・ストイックな姿勢や、「人事を尽くして天命を待つ」心境から漏れ出ることばには、たくさん学ばせてもらえるものがあります。素人でも、なにがしか自分が好きで自分のペースで楽しめるスポーツが見つけ出せるといいですよね。
「音楽・製作・瞑想などより、“朝、体を動かすこと”が頭を良くする!」
米カリフォルニア州教育局の最近の大規模調査の結果、運動量・体力と学力・知的能力には相関関係があることがわかりました。運動すると、脳に栄養が多く送られ、認知・思考・感情を活発にするそうです。その際大切な心がけとして、
①心拍数を最大の8割まで上げる。
②普段使わない筋肉を使うチームゲームを楽しくやるのがよい。
③できれば朝やるとよい。
の3点があります。
日本でも、栃木県宇都宮市立瑞穂南小学校では、月2回ほどインストラクターの指導の下に20分程度、「だるまさんがころんだ」などを本格的に真剣にやって汗だくになっているそうです。子どもたちは、「頭がすっきりする!」と言って教室へ入っていくようです。(『プレジデントファミリー』2013年10月号)
最近、聖徳学園大学が中心になって、「野球チーム監督が怒らないで選手を育成する」運動を始めたそうです。まずは、「お仕着せ」・強制でなく自分で選んだスポーツを、楽しく・のびのび・マイペースで・精一杯打ち込むことが大切ですよね。
横井也有の『健康十訓』(続き)
横井也有の『健康十訓』の8~10条は、精神面の問題です。
八.少憤(少怒)多笑(いらいら怒らず朗らかに笑いましょう。)
健康への笑いの効用は、多くの医学者・宗教者が提唱しています。笑いはガンを退治するNK細胞を増やすことも医学的に証明されています。
「笑う門には福来る」という諺(ことわざ)もあります。誰しも明るい人の方へ引き寄せられますよね。
九.少言多行(文句ばかり言わずにまずは実行しましょう。)
このことばを見て、「有言実行(ゆうげんじつこう)」(発言・宣言したからには、責任をもって必ず成し遂げること。)を思い出しました。「禁煙」など他者に宣言すると、「言っちゃったからやらなきゃなあ~」という責任が発生するのですが、半面ことば倒れになってしまうリスクもあるので、場合によっては「ことば少なに行いが多い」方がもっといいのでしょう。
十.少欲多施(自身の欲望を控え周りの人々に尽くしましょう。)
本欄の最初のところで、仏教の「無財の七施」について述べました。必ずしも金品のやり取りに頼らなくとも、ことば(語り・手紙・イラストなど)・笑顔・スキンシップなどによる「施し(奉仕・サービス)」ができ、知性も感性も豊かに満たされることができます。
私がこれまでに、心の持ち方(精神(メンタル)面の問題)について、さまざまな啓発書を読んで、整理した文をここで載せましょう。
(1)どんなことが起こっても、失敗を重ねても、常に前向き・上向き志向で明るく大らかに受けとめ、次の一歩を踏み出す。笑い(ユーモア)ある生活を心がける。「笑う門には福来たる」「失敗(の悩み)は誰にでもある」「失敗しない人間なんてない」「七転び八起き」などのよく聞くことばを繰り返して唱えてみるのも良いですよ。
(2)社会的に認められる趣味・仕事・ボランティア等にたずさわり、心身を大いにのびのび働かせ、活性化する喜び・生きがい・やりがい・はりあいを感じる。
(3)家族・友人知人・他者との友好的な関係をもつ。仏教では「友人は選んでよい」とも言っています。
(4)一日終わったら、どんな結果であろうとも感謝の気持ちで締めくくる。
(5)ストレス発散:お風呂などでリラックスして、副交感神経を豊かにする。深呼吸(腹式呼吸・鼻呼吸で)・森林浴・草花樹木の匂いもよい。自分の好きな音楽を聴く・歌う・楽器演奏する、ミニ座禅(一日10分など)もよい。(「動」の後は、「静」)
(6)何歳になっても自分の関心・好奇心にしたがって自分なりのペースで楽しみながら学ぶ。(人から・本から・実践体験から・ネットから)
(7)真の・正しい信条・信仰心をもち、人生の根底・終着地を完全に保証され・支えられている安心感をもつ。
たくさんありますね。全部やらなきゃ!とあせると逆にストレスになります。「自分のやれること・やりたいことを選んで、マイペースで、気持ちよく」をモットーにどうぞ試してください。
横井也有(よこいやゆう)の『健康十訓』
横井也有(よこいやゆう)の『健康十訓』を現代の話題にそって解釈してみましょう。
一.少肉多菜(肉を控えて野菜を多く摂りましょう。)
二.少塩多酢(塩分を控えて酢を多く摂りましょう。)
三.少糖多果(砂糖を控えて果物を多く摂りましょう。)
四.少食多噛(満腹になるまで食べずよく噛んで食べましょう。)
これらの4ヶ条は、文字通り「食育」についての心得ですね。
〔二.について〕
よくテレビで「大食い競争」「激辛競争」などが放映されていますが、あまり子どもたちには観せたくない番組ですよね。また、夏ミカンやレモン汁など、酸っぱい味もほんの少しずつからでいいので、料理に加えるといいですね。
〔三.について〕
ビタミンCは人間の身体の中ではつくることができず、外から摂らなければ得られない栄養素だそうですから、毎日少しずつ摂る習慣をつけたいものです。また、砂糖による糖分もできるだけ少量を心がける必要がありそうです。
〔四.について」
現代日本の飽食時代では、むしろ「腹8分」が健康のもと、と言われるようになりました。医師・医学専門家によっては、「腹7分」を主張する人もいます。ゆっくりとよくかんで味わいながら食べるのが健康にもよいようです。子どもたちのおやつにも、柔らかいものばかりでなく、スルメや小魚などよく噛むものも与えましょう。
さて、このあとは、運動・清潔・睡眠についてです。
五.少衣多浴(厚着を控えて日光浴し風呂に入りましょう。)
六.少車多走(多歩)(車ばかり乗らず自分の脚で歩きましょう。)
七.少憂(少煩)多眠(くよくよせずたくさん眠りましょう。)
〔五.について〕
極寒などのとき以外は、普段に薄着を習慣とした方が、身体が寒さや病気に対する抵抗力をつけやすいと言われます。日差しを浴びることも、ビタミンDをたくわえたり、朝のすっきりとした目覚めのために推奨されています。
〔六.について〕
岐阜などはとくに自家用車社会なので、ついつい近いところでも車を使ってしまいますが、東京などの大都会では誰もが地下鉄を多く利用し、自宅から最寄りの駅まで、そして乗り継ぎの駅から駅まで毎日歩くので、脚力は強いそうです。
〔七.について〕
睡眠については、数回前にくわしく述べました。
以下については、また次回に考えましょう。
健康について
今回は、成人・子どもに共通する一般的な健康の基本的な問題を幅広く考えてみたいと思います。子どもの教育・保育の問題からは、視点が少し変わりますが、私たち成人の健康の問題は皆さん誰しも少なからず関心がある問題だと思いますし、何より大人・保護者・保育者が健康で心身ともにゆとりをもってのびのびと教育・保育にあたっていかなければ、健全な教育・保育になっていかないと思いますので、必要・大切な課題だと思います。
日本の歴史上の医者や専門家の中でも、とても分かりやすく唱えられた健康法に、江戸時代の横井也有(よこいやゆう)(西暦1702-1782)という尾張の俳人の『健康十訓』があります。まずは列記してみましょう。
一.少肉多菜(肉を控えて野菜を多く摂りましょう。)
二.少塩多酢(塩分を控えて酢を多く摂りましょう。)
三.少糖多果(砂糖を控えて果物を多く摂りましょう。)
四.少食多噛(満腹になるまで食べずよく噛んで食べましょう。)
五.少衣多浴(厚着を控えて日光浴し風呂に入りましょう。)
六.少車多走(多歩)(車ばかり乗らず自分の脚で歩きましょう。)
七.少憂(少煩)多眠(くよくよせずたくさん眠りましょう。)
八.少憤(少怒)多笑(いらいら怒らず朗らかに笑いましょう。)
九.少言多行(文句ばかり言わずにまずは実行しましょう。)
十.少欲多施(自身の欲望を控え周りの人々に尽くしましょう。)
この前半の一.から六.は、健康のなかでも身体的な要素(食事をはじめとする生活様式)を、後半七.から十.は精神的な要素(気持ちの持ちよう)を謳(うた)っているようです。
肥満・高血圧・高脂血症・高血糖(まさに現代でいう“メタボ”)、更にストレス・がん・痛風など、今まさに注目されている生活習慣の問題点を、既にこの時代に示していることには驚かされます。
10項目すべてとなると難しいことですが、一つでもより多く心掛けたいものです。
また他に有名な例は、福岡藩の儒学者・貝原益軒(かいばらえきけん)が正徳2年(1712年)に描いたとされる『養生訓』(ようじょうくん)も、ほぼ同様の内容を盛り込んでいます。
次回は、横井也有の10ヶ条について、現代の話題にそって解釈してみましょう。