<はさみの有用性と安全について>

今回は、普段の生活での身近な道具であるはさみについてのお話をしたいと思います。幼稚園では、普段の制作・切り紙遊びや作品展などを通して、子どもたちははさみを自由に扱うことができるようになってきましたが、便利さと身近さとで、ついつい安全な扱い方をおろそかにしがちです。全園集会「ののさままいり」でも、以下の点について十分注意するようお話をしています。
①紙やビニール・セロテープなどを切った後は、床に置きっぱなしにしない。かならず机の上や引き出し・道具箱にしまう。
②人に手渡しするときは、刃を閉じて中心や刃の方を自分で持ち、握るところを相手方に差し出す。このことにより、相手の立場に立つ、という思いやりの心も育ってほしいと願っています。

はさみを上手に使える子は、知能発達もよい、と多くの教育専門家も言っています。実際、手先を動かす作業は大脳を活発に働かせるということが生理学的に分かっています。はさみを使う時、私たちはすべての指をそれぞれ同時に使います。だから、はさみを上手に使うと頭が良くなると考えられるのです。
他に、ひもを結ぶ・折り紙・洗濯物たたみなども同様のねらいで大いに子どもたちにチャレンジさせたいものですね。

子育てにユーモアを!

初対面の緊張・警戒した人間関係にはユーモアで和ませたりできるように、何かと衝突の多かったりする子育ての現場でも、ユーモアで心のゆとりを取り戻すことができます。材料は、ダジャレ・(わざと)言い間違い・漫才・落語(「笑点など」)などいろいろあると思います。下の4コマ漫画は、毎朝朝日新聞の朝刊に掲載されているかなりの(30年近く続いている)長寿漫画で、「ののちゃん」(小3)こと山田ののこちゃん一家はごくごく一般的・庶民的な家庭の設定ですが、中学生の兄(のぼる君)、中年のお父さん(たかしさん)(ご養子さん)、お母さん(まつこさん)、おばあさん(しげさん)、皆それぞれに破格の常識はずれの性格・人格(キヤラクター)を持っていて、毎日違った人物が中心人物で破格のユーモアで世間の悲哀・悩みを朝から笑い飛ばしてくれて、元気をもらうことができ、毎朝私の家族でも楽しんでいます。
もちろん、笑いのセンス・好みも、それぞれ各自で多様なものですし、家庭生活はオリジナル・プライベートなもなのであっていいものです。我が家ならではの会話のやりとりで楽しむことを続けてほしいものですね。

 

家庭にユーモアと笑いを

まずは下の二つの詩をお読み下さい。

「若い?」 S・N

私がお母さんのあとをおっていると、
髪の毛の色がハデだから、
うしろから見ると、
少しだけ若く見えました。
でも前から見ると、
どこにでもいるようなおばさんでした。

「こたつの犯人」 M・M

今日のお母さんが こたつのスイッチを見て、
「こたつ、つけっぱなしだれ?」とおこっていた。
弟とぼくはどっちも、「ちがう!」と言った。
その時パパが、「あ~、オレオレ。」と言った。
いきなりお母さんは、「あっ、ほんとー。」
とやさしくなってスイッチを消した。
どうしてパパにはやさしいの?

この詩は、最近新聞やテレビでも話題になっている増田修治氏(元小学校教諭で現在白梅学園大学准教授)が、クラスで子どもたちに詩を書かせて、皆で評論する授業の中で出てきたとてもユーモラスな多くの詩の中の二編です。(『子どもの自尊心と家族・親と子のゆっくりライフ』汐見稔幸著・金子書房2009』) こんな詩がどんどん出てきて皆で味わい楽しみ合うためには、クラス内でかなり上質の信頼関係が築かれていることが必要なのだろうと思われますが、家族内でも目標としたい話しですよね。

《子どものことばはおもしろい》

当園での子どもたちのことばです。職員室前の廊下で、年長児T君がY.君に「廊下を走ってはいけません! やり直し!」と言っているのを職員と一緒に聞いて、普段の指導の効果(?)てきめん!といった感じで、思わずお互いに苦笑いしてしまいました。
ある教育専門家が、「おじいさん・おばあさんのごく普段の口癖さえ、そのままそっくり子どものことばの教育になります。」と述べている文を読んだことがありますが、おしゃまなタイプの年少の女の子が「幼稚園で「うちのおじいさんが、「会社でもう要(い)らん。」て言われたで、今は家におるよ。」と言ったよ。」という職員の話を聞いて、絶句したり爆笑したりしたこともあります。私たちはこうした子どもたちのことばをおおらかに楽しんでいますが、他面、子どもたちは毎日乾いたスポンジが水を吸い込むように周りの大人やテレビのことばを(良いことばも悪いことばも)そのまま覚えていくのだなあ、と多少恐ろしくも感じています。

「しいたけさようなら!」 (ンッ!!??)
子どもたちの言葉遊びも発展しています。ある年長児の歌う「いちご、にんじん、さんま、しいたけ・・・♫」という数え歌をある年少児がおぼえ、さらに「しいたけ」の語が気に入ったらしく、お別れのあいさつに「しいたけ・さようなら!」と子どもたちからユーモアたっぷりに呼びかけられました。子どもたちの柔軟で独創的な発想に学びたい思いです。もちろん、下品なことば・汚いことば・人を傷つけることばなどはたしなめなければなりませんが、日々新しいことばを覚え使い、自分の気持ちや思いつき・ひらめきを一生懸命自分のことばで表現しようとして柔軟に頭を働かせようとする子どもたちの姿は、おおらかに楽しみながら温かく見守りつきあってあげたいものですね。

<子どものことばのおもしろさ・ユーモア>

新聞紙上で、とっても心が温かくなる子どもの詩に出逢いました。まずはじっくりと読んでみてください。

お父さん 小学4年 江守慶介

お父さんは、朝早く会社へ出かけて、帰りもとてもおそい。
だから、休みの日以外は、ごはんもいっしょに食べられない。
月曜日から金曜日まで、お父さんに会わなかった時もある。
土曜日になってお父さんに会うと、何だかはずかしくて話ができない。
本当にたまにだけど、お父さんの体をマッサージしてあげた時は、
とてもいい気分になりました。
それは、「ありがとう、慶君。体のつかれがとんでいったよ」
と言ってくれたからです。
がんばって、お父さん。
(岐阜新聞2015.4.21)

いかがでしょうか? 素朴な内容ですが、とっても心が温まる良い詩だと思います。幼児たちには、まだこれほどの親を思いやることばを発することはできませんが、同じ心をいつも抱いていることと思います。紙上でこの詩を紹介されている増田修治さん(白梅学園大学教授)も「親も子も、どちらも同じように相手をいたわり合って生きているのです。」とおっしゃっています。

岐阜新聞2015年6月16日に載っていた子どもの詩には、たっぷりのユーモアとお兄ちゃんの思いやりが表現されていて、私は読んで思わずうなってしまいました。こんな子どもたちに育ってほしいと願う理想の心持ちだと思いました。じっくりと子どもたちと読んでみたいものですね。

ことばを毎日学びつつある子どもたちのことばは、言い間違い・勘違い覚え・冗談・新しいことばの一つ覚え・悪口・陰口など、実にさまざまで、中には修正したり、たしなめたりする必要のあるものも多いですが、大人が思いつかない発想で思わず快笑してしまうものもあります。ともに楽しみながら、ことばの面白さを見つけてやりとりしていきたいものですね。