健康について

今回は、成人・子どもに共通する一般的な健康の基本的な問題を幅広く考えてみたいと思います。子どもの教育・保育の問題からは、視点が少し変わりますが、私たち成人の健康の問題は皆さん誰しも少なからず関心がある問題だと思いますし、何より大人・保護者・保育者が健康で心身ともにゆとりをもってのびのびと教育・保育にあたっていかなければ、健全な教育・保育になっていかないと思いますので、必要・大切な課題だと思います。
日本の歴史上の医者や専門家の中でも、とても分かりやすく唱えられた健康法に、江戸時代の横井也有(よこいやゆう)(西暦1702-1782)という尾張の俳人の『健康十訓』があります。まずは列記してみましょう。
一.少肉多菜(肉を控えて野菜を多く摂りましょう。)
二.少塩多酢(塩分を控えて酢を多く摂りましょう。)
三.少糖多果(砂糖を控えて果物を多く摂りましょう。)
四.少食多噛(満腹になるまで食べずよく噛んで食べましょう。)
五.少衣多浴(厚着を控えて日光浴し風呂に入りましょう。)
六.少車多走(多歩)(車ばかり乗らず自分の脚で歩きましょう。)
七.少憂(少煩)多眠(くよくよせずたくさん眠りましょう。)
八.少憤(少怒)多笑(いらいら怒らず朗らかに笑いましょう。)
九.少言多行(文句ばかり言わずにまずは実行しましょう。)
十.少欲多施(自身の欲望を控え周りの人々に尽くしましょう。)

この前半の一.から六.は、健康のなかでも身体的な要素(食事をはじめとする生活様式)を、後半七.から十.は精神的な要素(気持ちの持ちよう)を謳(うた)っているようです。
肥満・高血圧・高脂血症・高血糖(まさに現代でいう“メタボ”)、更にストレス・がん・痛風など、今まさに注目されている生活習慣の問題点を、既にこの時代に示していることには驚かされます。
10項目すべてとなると難しいことですが、一つでもより多く心掛けたいものです。

また他に有名な例は、福岡藩の儒学者・貝原益軒(かいばらえきけん)が正徳2年(1712年)に描いたとされる『養生訓』(ようじょうくん)も、ほぼ同様の内容を盛り込んでいます。
次回は、横井也有の10ヶ条について、現代の話題にそって解釈してみましょう。

健康・成長には「スカベンジャー」を多く摂りましょう!

前回の本欄では、健康に良い食材全般を挙げましたが、今回も類似の話題で前回の話題を検証する話題を提供しようと思います。
ノーベル化学賞を受賞した吉野彰(よしのあきら)氏が小学生の時に読んだという『ロウソクの科学』(ファラデー著)の訳者である三石巌(みついしいわお)氏は、化学・医学の権威者だそうですが、この方が20数年前に出版された本を、最近三石巌氏の娘さんが再版本を出された『誰でもできる頭のよくなる習慣』(祥伝社2019)は、私たちや子どもたちの健康・成長に大切なことをとても分かりやすく書かれていました。その要点を2点ほど述べます。
➀朝ご飯の真の効用
「早寝・早起き・朝ご飯!」と、食育・栄養学・医学のさまざまな専門家は推奨していて、それはその日の活動に必要なエネルギーを摂取するため、と理由づけられているようですが、三石氏は少し違った理由を述べています。朝ご飯を食べると、消化のために必要な動きのせいで身体が熱を出し、血液が温まりこれで全身・脳内の血管が広がり血液が多く脳に送られ脳が活性化するのだそうです。これは掃除機が掃除のために動き続ける(モーターが回り続ける)と熱が出るように、いわば「副作用」のようなものだそうです。だから、朝ご飯はパンや冷やし中華のように必ずしも温かいものでなくともよいそうです。(同書P13~29)
➁「スカベンジャー」scavenger(不純物除去剤)を多く摂りましょう!
私たちの体内に発生する「活性酸素」が、ガンや脳卒中・糖尿病・冬に流行が広がるインフルエンザなどのほとんどの病気の発症の原因になります。これを掃除する役が「スカベンジャー」で、これは加齢とともに減少するので、食品から摂取する必要があります。よく言われることですが、野菜・肉・魚・果物など、各種の食材をバランスよく食べる、ということです。以下に具体的な食材例栄養分を整理してあげます。(同書P148~161)
〈ビタミンC〉
果物(レモン・イチゴ・みかん・柿など)・野菜(ブロッコリー・トマト・ピーマン・パセリなど)・さつまいも・番茶
〈ビタミンE〉
大豆・落花生・うなぎ・かつお・鮎・しじみ・コムギ胚芽
〈カロチノイド〉
緑黄色野菜(カボチャ・にんじん・トマトなど)・柑橘類・赤身の魚・海藻・卵黄・魚卵(たらこ・いくら・すじこ・うになど)・抹茶
〈ポリフェノール〉
緑茶・赤ワイン・コーヒー・ごま(煎り)・しょうが・香辛料・ハーブ

コーヒーや緑茶などはカフェインが多く含まれているので、幼い子どもはできるだけ控えた方がいいのでしょう。他は、やはりできるだけ多く摂った方が良いものばかりですし、大人が美味しそうに食べている料理は子どもも誘引されるものですから、まずは家庭の食卓にのせましょう。