SNS利用と人間性

これまでSNS利用にともなうリスクについて、いろいろな事例を述べてきました。とっつきやすさ・魅力などの点で最先端のプログラマー・ゲーマーが次から次へと提供するゲームにはまる、巨大な高度に専門の闇組織がたくみに誘い込む「闇バイト」「振り込め詐欺」、警察・消防署・行政部署を名のる脅し詐欺、などなど、なかなかすぐに犯罪とは気づけず足下をすくわれる事例が続いています。

ごく最近の新聞記事でも、こうしたSNSのリスクに警笛を鳴らすものがありました。

イギリス・アメリカの研究でも、「SNSの利用時間が長い人ほど、抑うつなどメンタルヘルスの悪化を経験しやすいと結論づけて」おり、同様の理由で「オーストラリアでは、16才未満のSNS利用を禁止する法案が昨年11月、可決された」そうですし、日本でもこの新聞記事の執筆者・成田瑞(なりたずい)氏の研究で、3200人の追跡研究で、同様の傾向が見られました。具体的な症状としては、「インターネットを使えないとイライラする▽睡眠不足になっている▽使い始めるとやめられないーーといった傾向を「不適切利用」と考えました。該当する人ほど、社会的なひきこもり傾向にあり、メンタルヘルスの悪化につながっていました。」他の問題点として、「ハラスメントやいじめ、人種差別や性差別、同調意識の高まり、過剰なやせ願望などのボディーイメージのゆがみ、自己肯定感の低下、身体活動の低下などが指摘されています。」(朝日新聞2025年6月1日・国立精神・神経医療研究センター長・成田瑞氏筆)

成田氏

もちろん、SNSを少しでも使うこと自体が悪いわけではなく、対面での人間関係・社会的なつながりを十分に結べて、以前の本欄でも述べた「人間力」を養う機会を持てる生活環境を保証することが大事なのでしょう。SNSに振りまわされて右往左往するのではなく、人間・私たちの方が主体性・自立性を保ちつつSNSを使いこなす能力を身につけるよう心がけていくことが求められるのでしょう。

別の記事で、有名な「佐藤ママ」が述べていることばが、とってもわかりやすく重要な切り口を表しているような気がしますので、最後に引用しておきます。

「チャットGPT 子どもには慎重に

チャットGPTを、成長期の何にでも影響を受ける子どもたちに使用するのは慎重になるべきだと思います。

1月15日の「折々のことば」(朝日新聞)で、谷川俊太郎さんの言葉が紹介されていました。今の子どもたちに最も大事な「国語の力」は何かと問われ、「朝、家を出てから、学校に着くまであったこと、見たことをきちんと言葉で伝えられればいい。詩を書くのはそのあとでいいでしょう」と応じたそうです。誰もが「自由な発想や想像力」といった答えを想像していた、とありました。豊かな人間性を備えた子どもを育てるとはそういうことなのでしょう。チャットGPTの詩と子どもが書いた詩の違いは、温かい血が流れているかどうかということでしょうか。」(朝日新聞2025年4月12日)