こころの教育

「自分でやる!」にどこまで付き合う?

乳幼児期に自我が芽生え始め好奇心が育ってくると、「何で?」「何で?」と質問攻めにしたり、親のやることを何でもまねしたりちょっかいを出したり、ということをいたずらっぽく楽しむようになりますね。まだできないことでも「自分でやる!」が出始めるときでもあります。でもまだまだ十分に能力が育っておらず失敗を繰り返して大騒ぎ、ということも日常茶飯事ですよね。「KANSAIこども研究所」の原坂(はらさか)一郎先生のアドヴァイスに耳を傾けてみましょう。
<ストレス知らず!基本の4つのステップ>
①「する」と言えばまずは見守る
②できなければ笑顔で手伝う
③仕上げはこどもに任せる
④自分でできたらしっかりほめる
(Benesse『こどもちゃれんじぷち通信』2015年12月号)
子どものできることは急かさずあせらずゆっくり見守りながら、手伝いながらやらせ、失敗も繰り返しながら(「七転び八起き」)、やれたことはしっかりほめる、ということが肝心なんですね。

こころを育む保育

<子どもの少し後ろからついていく保育>
未来を担う子どもたちには、意欲・やる気・元気いっぱいの子になってほしいとだれもが願うものと思います。それには、子どもたちの自主性・自発性を育むことが大切だと思われますが、そのためにはどうすればいいでしょうか?
幼児教育学の第一人者・汐見稔幸(しおみとしゆき)氏は、「少し後ろからついていく保育」というキーワードで分かりやすく述べておられます。「好奇心を引き出したり自主性を育てるのにもっとも大事なのは、子どもの先回りをしないで、子どもの好奇心の少し後ろからついていくことです。もっと具体的に言えば、子どもが「これ何だろう?」と思ったときには、十分に探索の体験をさせてやるということです。お父さんやお母さんは危なくないようにサポートしてやり、子どもの必要や求めに応じて対応してやればよいのです。これは、一見簡単なことのようですが、実行するのはなかなかたいへんです。」「この時期の探索活動をおおらかにさせてもらった子は、のちになっても好奇心や自主性が豊かになるという調査もあります。探索はおとなの目からは「いたずら」ですが、それをいたずらではなく「探索行動」と見るまなざしのあたたかさと受容的・共感的態度が子どもを育てるのです。そして受容してもらっていると感じるから、子どもはやがて親の言うことを聞く子になれます。」(『心も身体もほんとうにかしこい子に育てる』主婦の友社・2004年)
もちろん生活上の基本的なあいさつや社会ルールなど、親・保育者が意識的に教えなければいけないことも少なくなく、子育てのプロセスのすべてにこの方針を貫くことは不可能だとは思いますが、日曜・祝日や、1日の一部のある時間内にこの方針で子どもたちとつき合ってみるのも一興ですし、「この子はこんなことに興味があるのか~~。」などの新しい発見があるかもしれませんね。

こころ育て

過去の岐阜新聞の教育記事で「子どもたちの自尊感情(自信感)を育てる」という優れた文章がありました。(2012年8月13日NPO法人「フリースペースたまりば」理事長・西野博之氏筆)

「子どもたちの生活・活動には多くの失敗がつきものであり、安心して失敗できる環境をつくることが大切である。子どもは丸ごと受け止められているという安心感を持った途端に元気になる。」「不登校やひきこもりの青少年に対して、親がやっきになって何とか学校や社会に出させようとこだわっている間は動こうとしなかったが、親が「まあ生きてくれたらいいか。」とあきらめた途端、自分から動きだすことがよくある」そうです。「無事で生まれて!と願ったあの日の気持ちを思い出し、「あなたがいてくれるだけで嬉しいよ。」というシグナルを子どもたちに伝えて欲しい。」とのことでした。
子育ては決してこざかしい理屈(りくつ)ではなく優(すぐ)れて人間的なものなのですね。

こころ育て

子どもや私たちの健康やからだ育ての話を続けてきました。今後は、こころ育ての話をしていきたいと思います。
詳細・具体的な話題を出す前に、教育の三本柱(➀からだ育て➁こころ育て➂ことば育て)の関連の深さを顧(かえり)みておきたいと思います。この3つは、それぞれ別ものではなく、互いに密接に関係しているものです。一つの具体例として、「交通安全の規則を守る」という道徳を身につけられるか?というこころ育ての問題を考えても、道路や駐車場にはどんな乗り物があってどんな危険があるか?ということを正しく知らなければ、安全のためにどんなことを心がけなければならないか?ということを理解できませんし守ろうという気持ちも起きませんよね。これが、知識・理解力が、善への意欲・悪の回避という道徳性を導く、という例です。逆に、愛され・大切にされて幸せ感を感じていればこそ(こころ育て)、生活上で湧き上がるさまざまな疑問をやりすごしてしまわないで、大人・教師に「何で?」「どうして?」「○○って何?」という知的な質問をぶつける意志・意欲が育つ、というのが幼児期・児童期の特徴です。これが、自然な感性を尊重されていると、知的な好奇心が育ってくる、という「道徳性が知性を導く」という例です。また、「健全なる精神は健全なる身体に宿る」「衣食足って礼節を知る」などのことわざの通り、健康や適切な生活状況という基礎の上に知的探究心・芸術性・道徳性などの高位の精神活動が展開される、ということも広く認められていることだと思います。
三本柱は「鶏が先か?卵が先か?」の永遠の問いと同じで、どれが一番大事、と決められるものではなく、循環的に関係・因果しているものだとも思います。

スポーツについて

これまで「からだ育て」のテーマで、食育・睡眠その他の諸問題について考えてきました。今日は、「体育・運動」について考えましょう。

2021年夏・2022年冬とオリンピックが続きました。世界トップクラスの各種スポーツの選手たちの活躍ぶり・ストイックな姿勢や、「人事を尽くして天命を待つ」心境から漏れ出ることばには、たくさん学ばせてもらえるものがあります。素人でも、なにがしか自分が好きで自分のペースで楽しめるスポーツが見つけ出せるといいですよね。

「音楽・製作・瞑想などより、“朝、体を動かすこと”が頭を良くする!」
米カリフォルニア州教育局の最近の大規模調査の結果、運動量・体力と学力・知的能力には相関関係があることがわかりました。運動すると、脳に栄養が多く送られ、認知・思考・感情を活発にするそうです。その際大切な心がけとして、
①心拍数を最大の8割まで上げる。
②普段使わない筋肉を使うチームゲームを楽しくやるのがよい。
③できれば朝やるとよい。
の3点があります。
日本でも、栃木県宇都宮市立瑞穂南小学校では、月2回ほどインストラクターの指導の下に20分程度、「だるまさんがころんだ」などを本格的に真剣にやって汗だくになっているそうです。子どもたちは、「頭がすっきりする!」と言って教室へ入っていくようです。(『プレジデントファミリー』2013年10月号)

最近、聖徳学園大学が中心になって、「野球チーム監督が怒らないで選手を育成する」運動を始めたそうです。まずは、「お仕着せ」・強制でなく自分で選んだスポーツを、楽しく・のびのび・マイペースで・精一杯打ち込むことが大切ですよね。