《子どもを信頼・尊重すること》 「子どもの少し後ろからついていく保育」

未来を担う子どもたちには、元気・やる気・意欲いっぱいの子になってほしいと多くの大人・保護者・保育者が願うものと思います。それには、子どもたちの自主性・自発性・自己肯定感を育むことが大切だと思われますが、そのためにはどうすればいいでしょうか?

幼児教育学の第一人者・汐見稔幸(しおみとしゆき)氏は、「少し後ろからついていく保育」というキーワードで分かりやすくアドヴァイスしてくださっています。「好奇心を引き出したり自主性を育てるのにもっとも大事なのは、子どもの先回りをしないで、子どもの好奇心の少し後ろからついていくことです。もっと具体的に言えば、子どもが「これ何だろう?」と思うときには、十分に探索の体験をさせてやるということです。お父さんやお母さんは危なくないようにサポートしてやり、子どもの必要や求めに応じて対応してやればよいのです。これは、一見簡単なことのようですが、実行するのはなかなかたいへんです。」「この時期の探索活動をおおらかにさせてもらった子は、のちになっても好奇心や自主性が豊かになるという調査もあります。探索はおとなの目からはある意味「いたずら」ですが、それを単なるいたずらではなく「探索行動」と見るまなざしのあたたかさと受容的・共感的態度が子どもを育てるのです。そして受容してもらっていると感じるから、子どもはやがて親の言うことを聞く子になれます。」(『心も身体もほんとうにかしこい子に育てる』主婦の友社・2004年)

私は、長男が幼少の頃、早朝に一緒に近所を散歩していましたが、そんなときにこの言葉に出会い、この視点を念頭に置きながら、子どもの「少し後からついていく」ように試みてみましたら、日々どんどん散歩コースが延長していき、ちょっと苦笑した経験もしましたが、子どもの好奇心も満足させられたと思っています。

年長者としてはもちろん、生活上の基本的なあいさつや社会ルールなど、親・保育者が意識的・積極的に教えなければいけないことも少なくなく、子育てのプロセスのすべてにこの「後ろからついていく」方針を貫くことは不可能ですし必要もないとは思いますが、日曜・祝日の遊びや、散歩など1日の一部分の決めた時間にこの方針・視点で子どもたちとつき合ってみるのも、新しい発見があって子育てに楽しみを見つけられるかもしれませんね。